長野県に住みたい(戻りたい)けど、エンジニアの仕事ってあるの?
長野県在住のエンジニアとして、たまにIターン、Uターンの相談を受けます。今回はその疑問にお応えしてみたいと思います。
私は出身が長野県上田市で、大学入学のために上京→大学卒業もそのまま残り、東京、神奈川で約6年働いた後、地元に戻ってきました。
地元長野で働き始めて10年くらいですが、その間ずっとITエンジニアをやっています。
私の経験と地元企業で知り合った移住者の方のお話を交え、長野県のエンジニア事情とオススメの転職サイトについてご紹介します。
エリアが4つに分かれます:長野県の基礎知識
長野県は都道府県別面積ランキング第4位。
かなり広い県です。
その県土の8割を山が占め、その山々によってエリアが大きく4つに分断されているのが特徴です。
- 東信 県の東側。東京都に近いエリア。軽井沢町、上田市など。
- 北信 県の北側。新潟県に近いエリア。長野市、小布施町など。
- 中信 県の西側。富山県に近いエリア。松本市、安曇野市など。
- 南信 県の南側。愛知県に近いエリア。諏訪市、伊那市など。
長野県の仕事探しにあたっては、この4つのエリアを意識することが大事です。
エリアの移動は基本的に「山越え」となるため、想定よりも面倒くさく時間がかかります。
例えば長野市に住みたいのに、南信の会社に就職してしまったら…。通うのはほぼ絶望的です。
会社は住みたいエリアの近くにあるかを意識して探しましょう。
仕事は開発より社内SEの引き合いが多いです
長野県は観光業、製造業が中心産業です。
そのため、これらの会社の情報システム部門の求人が多い傾向にあります。
開発会社ももちろんありますが、数は少ないです。中には東京企業のサテライトオフィスもあり、そのようなところは求人を出すこと自体が稀なことも。開発を希望するエンジニアは、製造業のソフトウェア開発部門に就職するパターンが多いです。
例えば、「カラリオ」でおなじみのセイコーエプソン。プリンターの製造メーカーとして有名ですが、最近はプリンターもWebに繋がったり、ケータイから画像を送ることができたり、ソフトウェアなしでは成り立たなくなっています。
このような会社では、商品開発部隊の一部としてソフトウェア開発部門や関連子会社を抱えていますので、そこを狙います。ただ、製造業である以上、必然的に組み込み向けのスキルセットが要求されてしまいます。
アプリ系やWeb系を希望する場合は、Web制作会社や独立系メーカーを探すことになりますが、こちらはさらに数が少ないので、条件が良いところを探すのはかなり大変だと思います。
要注意
県外異動になることがあります!
長野県に限らず田舎の企業あるあるだと思いますが、せっかく県内企業に就職しても県外に飛ばされるケースがあります。
エンジニアの場合、取引先が東京の会社でそちらに出向になるというケースが驚くほど多いです。ビジネスの中心は東京や大阪などの大都市なので、ある程度は仕方ないのかもしれませんが…。
さらに、大手製造業の場合は海外赴任という可能性もあります。
せめて移住後すぐに異動ということがないかは、事前に確認し気を付けましょう。
移住後は長野から離れたくない、という方は県内活動がメインの会社を探すことをおすすめします。しかし、そのような会社は事業規模も小さいため給料が他よりも安いところが多いです。それもイヤなら、たぶん公務員くらいしか選択肢がありません。
給料は低め。その分物価の安さと精神的な安定感が得られます
長野県の平均年収ランキングを見ると、一番高い企業でも年収は800万円以下。
しかも下落幅が非常に大きく、ランキング20位時点で年収が550万円…。都内の新卒エンジニアレベルの給与水準でしょうか。
残念ながらこれは低すぎと言わざるを得ませんが、その分物価も安いのが特徴です。
例として東京近郊と長野県の土地の基準価格を比較してみます。
- 東京 1坪100万円
- 長野 1坪10万円
場所にもよりますが、長野県の地価は東京の10分の1程度。長野が安いというよりも、東京の地価が高すぎるだけだと思うのですが、これが現実です。
都内の友人が東横線沿線のマイナー駅(特急止まらない)に庭なしの一軒家を購入したのですが、土地だけで3000万円かかったそうです。
長野県で3000万円あれば、土地+庭付き一戸建て+駐車場までいけます。だいたい「都内の半分の値段で、都内の倍の大きさの家が建つ」というイメージです。
賃貸物件も割安で、私がUターン当初、妻と2人で住んでいたマンションは、2LDK+駐車場2台分つきで家賃7万円ちょっとでした。都内の1DKレベルの値段で、家族が暮らせる部屋が手に入ります。
このぐらい差がありますので、給料だけでは価値が図れないのが難しいところです。
日用品は都内に比べて少し安いくらいですが、野菜や果物の鮮度が全然違います。
空気や水もおいしいですし、「お金では買えない何か」を求める人にとっては良い場所だと思います。
実は昔からエンジニアの移住者が多いです
近年は移住促進キャンペーンが盛んですが、私が地元に戻った10年前からエンジニアの移住者は多い印象です。
静岡や北海道、沖縄など。本当に日本全国からいろんな方が集まってきています。
共通しているのは、登山やウィンタースポーツなどのアウトドア系の趣味を持っていることです。それも結構ガチめなやつ。スキー競技の元日本代表選手だったとか、オリンピック競技のスケルトンをやっているとか…。
長野県というと「山」「雪」という印象が強いため、趣味が高じて憧れが強くなり、移住を決意されたようです。
長野県の会社は「閉鎖的」と言われることもあるのですが、このような背景もあり、IT関係ではあまりそういう雰囲気は感じません。
すでに多くの移住エンジニアの方が活躍されていますので、これから移住を検討される方にとっては、安心材料になるのではないでしょうか。
エンジニアの仕事探しは転職サイトでOK
エンジニアの仕事探しですが、基本は転職サイトの利用です。ただ、大都市ほど求人数がありませんので、都内の転職と同じ探し方では無駄が多いと思われます。私の経験や移住された方のお話を元に、オススメの転職サイトとその活用法をご紹介いたします。
E-CURE(イーキュア)
長野県内の就職に特化した転職サービスです。申し込むと面談を行ってもらえますが、長野県外の方はZoomなどのWeb会議システムを利用したオンライン面談となります。
長野県特化というだけあり、大手転職サイトが持っていない中小企業の情報も多く持っているのが特徴です。
県内企業の内情もよく把握しており、「あの会社は残業が多い」「ここは社長がいい人」とか、いわゆる裏事情も教えてもらえます。
エンジニアの転職であれば、元エンジニアの方が担当についてくれますので、その点も安心です。
ただ、地元の中小企業支援の目的もあるため、年収は低めのものが多い印象です。
裏情報はここ以外では手に入りにくいと思いますので、まずは一度話を聞いてみるのがおすすめします。
ここがポイント
- 長野県特化の転職サイト
- 県内企業の裏事情に精通
- 長野県に移住するなら一度は話を聞くべき
リクナビ
言わずと知れた転職サイト最大手です。サイトには長野県の企業情報も多く掲載されていますが、私が知る移住者の方はリクナビエージェントを多く利用されています。
エージェントに希望の条件を伝えて、いい会社が紹介されるまで気長に待っていたとのことです。中には会社探しに3年かけたという方もいらっしゃいました。
どちらかというと、急がずのんびり転職活動される方に向いている活動方法だと思います。
大手から中堅上位企業を狙う場合におすすめです。
ここがポイント
- 言わずと知れた大手転職サイト
- 大手から中堅上位企業の求人が多い
- リクナビエージェントの利用がオススメ
自力で探す:ググって直接応募
転職サイトではないのですが…。独立系のシステム開発会社やWeb制作会社を探すのに有効です。というのも、都内の会社ほど資金力がないため、仲介手数料が高い転職サイトには募集を出さないことがよくあります。
まず、「長野県 システム開発」などでググり、気になる会社のWebサイトの採用情報を確認。採用情報が自分の希望とマッチするようであれば、そのまま応募フォームから直接応募します。
私は東京から地元に戻る際に、この方法で転職先を探しました。
「上田市 システム開発」のように場所をピンポイントで限定するのがコツです。システム開発会社自体が少ないため、簡単に地域の会社を網羅できます。
ここがポイント
- 転職サイトに求人がない小規模な会社を見つけられる
- 希望する地域限定で求人を探せる
- 独立系の会社で働きたい人、住みたい場所がはっきり決まっている人にオススメ
まとめ:エンジニアの移住者は意外と多い。田舎暮らしに憧れる方はぜひ!
以上、長野県のエンジニア事情と仕事探しの方法をまとめてみました。給料は安い傾向にありますが、それに合わせて物価も下がります。がつがつ稼ぎたい人には不向きですが、お金よりも自然体験を重視する方には最適な場所だと思います。
長野県は都会に近い田舎なので、都会が恋しくなったら日帰りで行って帰ってこれるのもメリットです。
そして、今は「Iターン信州」という長野県主催のキャンペーンが展開されています。こちらでは、長野県での仕事探しから移住までトータルサポートをしてくれるようです。移住をお考えの方はぜひ活用してみてください。