今年度から小学校でプログラミング教育がスタートします。
「ウチの子はついていけるかしら?」「プログラミング教室に通わせた方が良いのかしら…」と心配されている親御さんも多いのではないでしょうか。
我々エンジニアでもプログラミングを本格的に習ったのは早くて高校か大学。
コンピュータと無縁の学生生活を送ってこられた親世代の方が不安になるのは当然と言えます。
今回は小学校のプログラミング教育は何をするのか、家庭で簡単にできるプログラミング学習についてご紹介します。
小学校では「プログラミング」そのものは教えない
「プログラミングなんて分からないし、宿題の面倒も見れないわ」という保護者のみなさま、ご安心ください。
足し算や引き算のように、小学校のプログラミング授業では「プログラミング」そのものを教えるわけではありません。
文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引」には、学習のねらいが次のように記載されています。
文部科学省:小学校プログラミング教育の手引
- 「プログラミング的思考」を育む
- プログラミング的思考とは
- 自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
- プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付く
- 身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育む
小学校のプログラミング教育は社会学習の要素があり、「私たちの生活にどのようにコンピュータが関わっているか?」「コンピュータはどうやって動いているか?」といった現代社会の仕組みを学ぶのです。
社会の授業で「ゴミがどうやってリサイクルされるか?」ということを調べたりするのに似ていますね。
論理的的思考力を養うためにプログラミングを行うことはありますが、「プログラミング」そのものを教えることが目的ではありません。
文部科学省のガイドラインにははっきりと次のように記載されています。
※プログラミングに取り組むことを通じて、児童がおのずとプログラミング言語を覚えたり、プログラミングの技能を習得したりするといったことは考えられるが、それ自体をねらいとしているのではない
文部科学省:学習指導要領のポイント
プログラミングより論理的思考力を身に着けることが重要
文部科学省のガイドラインにもある通り、小学校ではプログラミング技術そのものよりも「プログラミング的思考」、つまり論理的思考を身につけることが重要視されています。
論理的思考とはものごとを順序立てて考えたり、複数の考え方や要素を組み合わせたりできる思考能力のことです。
例えばテレビで片付けの達人が100均の箱やつっぱり棒を駆使して、見事に部屋を整理する番組を見たことはないでしょうか? 100均アイテムの意外な使い方やそのアイデアにびっくりしますよね。
これは片付けに論理的思考をうまく活用した例です。単純な要素を組み合わせて新しい価値を創造したり、家庭の動線を意識して的確な位置配置をしていくわけです。
プログラミングはこのような論理的思考の塊です。
言い換えれば、論理的思考とは将来プログラミングを覚えるための基礎能力であると言えるでしょう。
「じゃあ、ウチの子はプログラマーにならないから関係ないな」とは思った方。ちょっと待ってください! それは「小説家にならないから文字の読み書きは必要ない」と言っているのと同じです。
これからの時代、日常生活でこの知識が必要になると考えられているからこそ小学校からプログラミング教育が導入されるのです。
例えば現在日本ではテレワークが急速に普及しつつありますが、そのためには家からパソコンをネットワークに接続する必要があります。
しかし何らかのトラブルでうまく接続できなかった場合、そもそも仕事を始めることすらできません。
今はまだ多くの会社が手探りでサポートも手厚いと思いますが、これからテレワークが主流の時代になったら、自分のパソコンをネットにつなげる程度の技術は必須になることでしょう。
もしかしたら、自分でネットワーク設定できないような人は就職自体が難しくなるかもしれません。
そういう時代を見越しての「プログラミング教育」であることは忘れないでください。
家庭で論理的思考力を養うには?
これからは小学校のカリキュラムとして論理的思考を学ぶ場が用意されますが、できれば家庭でも少しずつ教えていきたいと思われるかもしれません。
プログラミング教室に通えるのであればそれで良いのですが、高価ですし送り迎えの手間も大変です。
そこでいくつか家庭学習に取り入れやすい教育方法をご紹介いたします。
プログラミングトイ(おすすめ度★)
2018年に政府からプログラミング教育の必修化が発表されて以降、さまざまなメーカーから専用玩具が登場しています。
ロボットタイプ、ボードゲームタイプ、パズルタイプなど、お子様の嗜好に合わせたおもちゃを選ぶことができます。
ただ、どれも値段が高めなのが子育て世代にはつらいところ。
プログラミングトイは3000円以上のものが多く、中には4万円するような高価なものもあります。
知育系のおもちゃは子どもの学習状況や発育に合わせて変わっていくものですので、よほど裕福でない限りこの価格設定がネックになってくると思います。
そうでなくとも子どもは飽きっぽく、同じおもちゃで長くは遊んではくれません。効果を実感できずに終わってしまう家庭も多いのではないでしょうか。
プログラミングトイに挑戦するとしたら、まずはおもちゃのレンタルサービスを利用されることをおすすめします。
そこで子どもに合ったおもちゃを見つけて購入するか、もしくは毎月違うおもちゃをレンタルするといった使い方であれば、デメリットを軽減して長く楽しめると思います。
スマホゲーム(おすすめ度★★★)
スマホには無料の知育ゲームが大量にあります。
このようなゲームをダウンロードし、お子様と遊んでみてはいかがでしょうか。
無料なので飽きたら別のゲームに切り替えるだけですし、気軽に楽しめます。
難点は数が多すぎてどれがいいか良く分からないというところでしょうか。
そのような方は、まず「Think!Think!シンクシンク」から始めてみることをおすすめします。
Think!Think!シンクシンク 思考力が育つ教育アプリ
WonderLab Inc.無料posted withアプリーチ
知育アプリとして有名なので、知育アプリがどのようなものか体験する意味でも遊んでみて損はないと思います。
これに飽きたらストアのおすすめから、子どもの嗜好に合いそうなものを選んでみてはいかがでしょうか。
ナンプレ(数独)(おすすめ度★★★★★)
個人的に今回最もおすすめしたいのが、この「ナンプレ」です。
クロスワード、お絵描きロジックと並び、本屋さんのパズル系コーナーでよく見かける「アレ」です。
特別な機材を必要とせず鉛筆1本で遊べるのが大きな魅力です。
主婦の暇つぶしと侮ることなかれ。実はナンプレにはプログラミングに必要な論理的思考の要素が多く入っているのです。
ナンプレとは、縦、横、3×3のマス内に1~9の数字をすべてかぶらないように入れるゲームです。
他のマスの数字をヒントに入れるべき数字を徐々に絞っていくのですが、その過程はまさに仮説→検証の作業なのです。
これは論理的思考でも重要な要素で、学校のプログラミング教育でも必要とされる場面が多いと思います。
例えば小学校ではScratch(スクラッチ)と呼ばれる学習用プログラミング言語を使い、図を書いたりキャラクターを動かしたりします。
思い通りに動かなかった場合、なぜ動かないのか原因を特定する力が試されますが、それはナンプレで数字を絞り込むのと同じ考え方なのです。
問題集は100均にも売っていますので、100円で論理的思考を学べると考えればコスパは最強だと思います。
高価な機材を必要としないので壊される心配もないですし、一度お子様と一緒に挑戦してみてはいかがでしょう。