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あいまいな目的はみんなを不幸にする!プロジェクトを成功に導く目的設定とは?

2020年2月14日

大規模なシステム導入プロジェクトにしろ、ちょっとしたシステム開発にしろ、成果を最大限に発揮するシステムを作るには適切な目的設定が欠かせません。

適切な目的設定によってシステムの使い方と必要な機能が明確になるため、不要な機能をそぎ落し、コストを適切に抑えることができます。

反対に目的設定を誤ると、いくら時間と労力をかけても望むものが作れず、開発者も利用者もモチベーションが下がり、売り上げにもコスト削減にも貢献できない最悪のシステムとなってしまいます。

今回は、システム開発において目的をどのように設定すればよいのか考えてみたいと思います。

目的と目標の違い

最初に、よく混同される目的と目標の違いについて明確にしておきます。

目的 最終的に目指すゴール。定性的で数値化しにくいことがある。
目標 目的達成に必要な手段。定量的で数値化しやすい。

一つの目的に対し、目標は複数設定されます。

例えば、「富士山に登頂する」という目的を考えてみます。

この場合、目標としては「5合目まで登る」「7合目まで登る」のようなものが考えられます。

目標を順番に達成することで、目的を達成するのです。

目的が最終ゴールであるなら、目標は目的達成のときに通る通過点チェックポイントと考えると分かりやすいです。

目標を考えるときは目標と達成手段をセットで検討します。

「〇合目まで登る」という目標は、徒歩か車という移動手段を想定した上での目標となります。

移動手段にヘリコプターを使うつもりなら山頂まで一気に行けてしまいますから、この目標は意味がありません。

その場合は「ヘリコプターのチャーター料金の見積もりを一週間以内に3社から取る」のような目標設定を行います。

もう一つ重要なことがあって、目的は必ずしも計測できるわけではないということです。

「富士山に登頂する」という目的は、山頂に到着すれば終了なので達成状態が分かりやすいです。

しかし、実際の目的は必ずしも分かりやすいものばかりではありません。

例えば目的が「商品の認知度を向上させる」だとして、これだけでは抽象的すぎて認知度が向上した状態を把握することは困難です。

「商品の認知度を向上させる」という目的に対して、「ホームページへのアクセス数を50%増加」「展示会での名刺交換数100枚」のような目標が設定されて、はじめて計測できる状態となります。

この目標を達成したら、「ホームページへのアクセス数を70%増加」のような次の目標が作られます。

目的は立場によって変わる

目的設定で意識しなくてはいけないのは、目的は立場によって変わるということです。

プロジェクト
メンバー
プロジェクト
リーダー
管理職経営層
目的
雇用創出による社会貢献
目的
利益率改善
手段
利益率改善
目的
商品の製造原価削減
手段
商品の製造原価削減
目的
生産工程の効率化
手段
生産工程の効率化
手段
生産管理システム刷新

このように経営層が掲げる目的は施策に展開され、それが会社組織を経由してメンバーに展開されていきます。

ここで目的の距離感について意識してみましょう。

目的はプロジェクトの指針となるだけでなく、メンバーのモチベーションにも影響します。

単に「今回のプロジェクトの目的は生産工程の効率化です」というよりも、「今回のプロジェクトは製造原価を削減することが目的です。そのために生産工程を見直し、新しい運用に耐えられるシステムに変更します」という説明の方がメンバーの納得感が得られ、モチベーションも上がるのではないでしょうか。

しかし、「今回のプロジェクトは雇用創出による地域への貢献が目的です」としてもシステム刷新から遠すぎてピンと来ません。

このように、経営層が最終的に実現したい目的とプロジェクトとして適切な目的は異なることがあります。

目的は課題の裏返し

現状に不満がない場合、目的が生まれることはありません。

目的とは現状の不満の表れです。

例えば「ダイエットしたい」と考えている人であれば、現在の体型に不満――つまり課題を抱えているということになります。

反対に考えると「体重が多い」という悩みがあり、それを解決するために「〇kg痩せよう」という目的が設定され、ダイエットに取り組むことになります。

目的があいまいな場合、この課題が明確になっていない可能性があります。

この例でもう少し突っ込んで考えると、「体重が多い」というのは正確には課題ではないことが分かります。

「体重が多い」ということに起因して、さまざまな問題が発生することが本来の課題です。例えば、体重が多いせいでメタボ診断されてしまったとか。

この場合、本来の目的は「メタボ解消」であり、「体重を減らす」ことは目標の一つであったことが分かります。

課題を深掘りし明確にすることで、本当に達成したいこと=目的が見えてくるのです。

目的が正しくないとどうなるか?

目的設定の重要性はご理解いただけたと思いますが、それでは適切な目的が設定されないままプロジェクトを進めた場合、どうなってしまうかを考えてみたいと思います。

先ほどのダイエットの例で考えてみます。

本来は「メタボ解消」とすべきところ、そこまで深堀りせずに「体重を減らす」ことを目的に設定してしまったとします。

常識的に考えれば、食事制限や運動によって体重を減らすことを考えると思います。

しかし「体重を減らす」ことだけを目的とするのであれば、絶食した方が手っ取り早いです。

費用はかかりますが、脂肪吸引などの医療行為に頼る手もあるでしょう。

さて、これらは適切な手段でしょうか?

「メタボ解消」が目的であれば、「健康的に痩せなくてはいけない」「一時的な体重削減では意味がない」ということが共通認識が持てます。 そもそも絶食脂肪吸引は検討の余地すらないことが分かります。

誤った目的の危険性はここにあります。

ダイエットのような分かりやすいものであれば、多くの人が裏の意図を読み取れるため常識的な判断を下せますが、ビジネスの現場では裏の意図を理解してくれるエスパーのような人はほとんどいません。

誤った手段を取らないためにも、目的設定は正しく行う必要があります。

目的はただの建前か?

例えば、10年以上使っているような古いシステムを刷新するような場合。

「デザインが古い」「古いシステムを使ってるのがなんかダサい」などの心情的な理由でシステム刷新のプロジェクトがスタートすることがあります。

本音はそうだとしても会社である以上、合理的な理由がないと予算がつくことはありません。

そのような時に、「処理速度が遅い」「最新のOSに対応できない」などの課題を理由にシステム導入の目的を作りあげることがあります。

「現行システムはWindows10での動作保証がされておらず、サポート対象外である。そのため、Windows10で動作するシステムに入れ替える」という感じでしょうか。

なんとなく正当な理由と目的に見えなくもないですが、これは正しい目的とは言えません。

仮にこのままプロジェクトを進めた場合、新しい機能が「なんかかっこいいな」「便利そうだな」と思ったら採用するといったプロセスをとりがちになってしまいます。

システムを入れ替えることが目的となっているため、機能を取捨選択する基準がないためです。

「古いから替えたい」という気持ちがいけないわけではないのですが、課題の掘り下げが足りないために、このような建前だけの目的になってしまうのです。

システムが古く処理が遅いという課題を感じているのであれば、処理が遅いことでどんな業務が滞ってしまうか、それによって仕事にどんな悪影響が出ているかという点を課題とした方が良いでしょう。

目的は必ずしも本音と一致する必要はありませんが、建前や方便だけになってはいけません。プロジェクトの指針方針となるように設定しましょう。

どうやって正しい目的を設定するか?

では、どうやって適切な目的を設定すればよいでしょうか。

今回、改めて目的設定のフレームワークがあるか調べてみたのですが見つけられませんでした。

目的はやりたいこと達成したいことであるため、明確であるという前提なのかもしれません。

しかしシステム開発の現場ではシステムを作ること自体が目的となってしまうことがあり、正しい目的を設定、確認する手段が必要となってきます。

そこで、システム開発の目的設定に有効と思われる手法をご紹介いたします。

なぜなぜ分析

不具合の原因究明の手法として、説明するまでもないくらい有名ですね。

なぜなぜ分析とは、発生した問題に対して「なぜ?」を繰り返すことで真の原因を特定する手法です。

本来は問題解決に用いる手法ですが、目的の深堀りにも応用できます。

当初の目的
勤怠管理システムを刷新し、働き方改革を促進したい
なぜ?
Q. なぜ働き方改革の促進が必要か?
A. テレワークなどの多様な勤務形態に対応するため
なぜ?
Q. なぜ多様な勤務形態に対応するのか?
A. 社員個人の事情やニーズに合わせた、働きやすい職場環境を作るため
なぜ?Q. なぜ働きやすい職場を作るのか?
A. 離職せずに長く会社で働いてもらうため

このように「なぜ?」を繰り返すことで目的が明確になってきます。

本来の使い方(問題解決)では「なぜなぜ5回」と呼ばれ、「なぜ?」を5回繰り返すことで真因にたどりつけるとされていますが、この場合は回数にこだわる必要はありません。

納得できる解が得られたら終了です。

この手法の良いところは、とにかく有名な手法なのでやったことがある人が多く、とっつきやすいということです。

目的がしっくりこない、ぼやけていると感じたら、「そもそもなんでこれをやりたいんだっけ?」ということを「なぜ?」を繰り返して確認してみてはいかがでしょうか。

まとめ

システムは運用とセットで機能や使い勝手を考える必要があり、とかく「動かしてみたら想像と違った」ということがよくあります。

目的を正しく設定することで、運用担当者だけでなく開発ベンダーにもシステムの方向性を正しく理解してもらうことができ、このようなトラブルを減らすことができます。

またプロジェクト中に迫られるさまざまな判断において、最も重要な判断基準となりますので、迷いを減らすことにもなります。

結果として軸のブレない、コンセプトがはっきりしたシステムとなりますので、効果を実感しやすいシステムになるでしょう。

目的の設定は慣れないと難しく感じますが、プロジェクトの成否を左右しかねない重要なものですので、ぜひチャレンジしてみてください。

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  • この記事を書いた人

SATORU

長野県在住のシステムエンジニア。仕事はソフトウェア開発、Web、デジタルマーケティング、組み込み、プロマネ、商品企画、システム導入、運用支援などなど。特化型ではなく万能型のエンジニア。田舎住まいなのでその方が重宝されるのです。

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