「プロスペクト理論」をご存じでしょうか?
この理論を理解することで、プロジェクト管理がちょっと楽になるかもしれません。
プロスペクト理論とは
プロスペクト理論(プロスペクトりろん、英: Prospect theory)は、不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。
引用:ウィキペディア(Wikipedia)
要するに「人間は損するのが大嫌いだよね」という理論です。
プロジェクトマネージャーや開発リーダー、はたまた経営層がミスジャッジをする時、実はこのロジックが働いていることがよくあります。
プロスペクト理論の損失回避性
次の選択肢のうち、あなたならどちらを選びますか?
- 100万円が無条件で手に入る
- サイコロを振って1か2が出たら200万円もらえるが、それ以外が出たら何ももらえない
100万円もらえる確率は100%、200万円もらえる確率は約33%です。
ギャンブル好きの方は2を選ぶかもしれませんが、多くの人は1を選ぶのではないでしょうか。
続いて、もう1問。あなたは200万円の借金をしています。次の選択肢のうち、あなたならどちらを選びますか?
- 無条件で100万円減額され、借金は100万円となる
- サイコロを振って1か2が出たら借金は全額免除されるが、それ以外が出たら何も変わらない
借金が減額される確率は100%、借金がチャラになる確率は約33%です。
確率は1つめの質問と同じですが、今度はギャンブル好きでなくとも2を選びたくなりませんか?
実験では1つめの質問で選択肢1を選んだほぼ全ての人が、2つめの質問では選択肢2を選んだそうです。
2つ目の質問の期待値は選択肢1が-100万円、選択肢2が約-60万円です。つまり、選択肢1を選んだ方が得なのですが、損をする状況下ではそういう合理的な判断ができていないことが分かります。
最初は何ももらえないというリスクを回避しようとし、次はお金を払わなくてはいけないというリスクを回避しようとしたわけです。
これをプロスペクト理論の「損失回避性」と呼びます。
開発プロジェクトにおける損失回避性
他の業界もそうかもしれませんが、システム開発がスケジュール通りに進まないことはよくあることだと思います。
チームメンバーから「開発が遅れている」という報告を受けたとき、リーダーはどのような判断をするでしょうか?
- 開発ツールに慣れてないから仕方ない。慣れれば早くなるだろう
- 難易度の高い機能の実装から手をつけてもらっているから仕方ない。後半になるほど実装スピードは上がるだろう
- 後半になれば○○さん(ベテランメンバー)の手が空いてきて、フォローに回ってもらえるだろう
- 新人の立ち上がりが遅いのは仕方ない。環境に慣れれば早くなるだろう
- これまでの機能はしっかり作り込んできた。不具合はないはずだから、その分のテスト工程を削って実装時間にあてよう
これらは全て「損失回避」の思考です。
「借金がチャラになるかも」という考えと同じで、損失(進捗遅れ)が発生している状況下で、損失(進捗遅れ)を挽回するための低確率で都合の良い判断をしているわけです。
太字の言葉がポイントで、「なるだろう」「ないはず」のような発言がチーム内で多く出始めたら要注意です。
損失回避性思考を回避するには
損失回避性思考は、このロジックを知っていれば簡単に回避できます。
大事な判断の時には、「自分にとって都合の良い思考に陥ってないか」自問自答しましょう。
これが分かっていれば、「自分が論理的な判断を下せる状態かどうか」を論理的に判断することができますよ。