IT業界にはメンタル不調者がとても多いです。
クライアントからの厳しい要求、深夜にまでおよぶ不具合対応などなど…。精神的に追い詰められる人が少なくありません。
私自身、一か月の休息が必要と診断されたことがあります。
メンタル不調が原因でエンジニアを辞めてしまった同僚も多くいますし、なにより残念なのが、そういう人の多くはもともとが優秀なエンジニアであったということ。
今後も大きな活躍が期待されるのに、早々に使いつぶされてしまうのです。
企業には優秀なエンジニアを保護する仕組みをしっかり作ってほしいとは思いますが、最終的に自分の身を守れるのは自分自身です。
今回は、エンジニア自信がどうやって身を守れば良いかを考えてみたいと思います。
エンジニアのメンタル不調は日本人の美徳が原因かも
多くの日本人の価値観は、「控えめで集団の和を重んじる」ところにあるとされています。
- 仲間が困っていたら助ける
- 褒められても謙遜し、自慢話にならないように注意する
- 相手を気遣う心を忘れない
どれも素晴らしいことですよね。
この価値観自体は間違ってないと思いますが、これが仕事になると裏目に出ていることも多いんじゃないかなあと思ってます。
つまり、こういうことです。
- 仲間が困っていたら助ける → 同僚の仕事を残業して手伝う(一人だけ早く帰るのは許されない)
- 謙遜し自慢しない → 正当な評価がされなくても我慢する
- 相手を気遣う → 過剰サービスによる過剰労働
つぶれるときはこれらの要素が折り重なって、ある瞬間にオーバーフローするんじゃないかと思います。
もちろん、パワハラなどの職場環境によってダメになるケースもありますが…。
自分の精神(こころ)を守るためには
では、どうやって会社に使いつぶされず自分を守れるか考えてみたいと思います。
完璧主義をやめる
汚い設計やコードを見るとイラっとしたり、リファクタリングしたい衝動に駆られませんか? 私はそうです(笑。
優秀なエンジニアほど、このような完璧主義な人が多いように思います。
実際、エンジニアと完璧主義は相性が良いです。
しかし、度が行き過ぎると自分の首を絞めてしまいます。
例えば次のようなことに覚えはないでしょうか?
- お客様への提出資料は、一度全部自分でチェックしないといけない気がする
- 要領を得ない後輩の質問にイライラする
- コーディング規約など、プロジェクトルールを守れない人が許せない
チームで仕事をする以上、最低限のことはやってほしいという気持ちはよく分かりますが、完璧主義の人はその「最低限」のハードルが高いです。
無意識でその基準を他人に求め、イライラ要因を自ら増やしている傾向があります。
納期が遅れても品質が多少悪くても、命が取られることはありません。
「できなくてもしょうがない」くらいの気持ちで、心にゆとりを持ちましょう。
車は焦ったりイライラした状態で運転すると思いがけない事故につながります。
それと同じで、ゆとりがないと仕事も正常な判断ができません。
完璧主義の人は「イライラ運転」に陥りやすいので、意識的に仕事のハードルを下げるようにするとゆとりが持てるようになると思います。
仕事を選り好みする
エンジニアの成長は技術力の向上やマネジメント力の向上と直結します。
IT業界は非常に変化が激しい業界ですので、自分の能力向上に役立たない仕事を受けて時間を浪費するのは大きなデメリットになります。
優秀なエンジニアほどプロジェクトの斡旋は多いですし、火消し(炎上したプロジェクトのサポートに入ること)に駆り出されることも多くなります。
そこで得るものがあればまだ良いですが、そんな状態で自分のキャリアプランなど描けるはずもありません。
結果、いつまでも「自分がやりたい仕事ができない」という状態が続き、不平、不満が溜まりやすくなります。
精神的な安定のためにも、できる限り仕事は選びましょう。
とはいえフリーランスならともかく、サラリーマンエンジニアでは、そんな簡単に仕事を選ぶことはできないと思います。
そんなときは、自分がやりたいことを日頃から上司に伝えておくことをおすすめします。
希望に沿う仕事がすぐに与えられなかったとしても、上司側に「つまらない仕事をさせて申し訳ない」という気持ちを芽生えさえることができます。
希望の仕事があった時には優先的に斡旋してくれるかもしれませんし、上司が自分の考えを知っているというのは精神的な安定につながります。
転職は逃げではない。今より待遇の良い会社はいくらでもある
こちらの意見や要望に取りあってくれない。
そんなブラック企業やパワハラ上司であれば、無理に職場に固執する必要はありません。
転職しましょう。
IT人材は、2030年には約79万人不足するという予測が出ています。
大手企業は横並びの賃金体系をやめ、データサイエンティストなどの高度IT人材の年収一千万円で雇用するなどの方針も出し始めました。
それくらい、今のIT業界は超売り手市場です。
探せばいくらでも仕事があります。
年齢が若いほど有利なのはいつの時代も変わりませんが、40代、50代のミドル層の転職市場もかなり広がっています。
政府の進める働き方改革によって、労働条件の良い会社も増えてきました。
「このままでは心がつぶれる」と感じたら、とりあえず転職サイトを覗きにいってみてはいかがでしょうか。
「いつでも転職できる」ということが分かるだけでも気持ちが救われるかもしれませんし、本当に辞めたいと思ったら転職エージェントに相談すれば良いのです。
「自分が辞めたら仕事が回らなくなる」と思っていませんか?
大丈夫です。人が一人辞めたくらいで会社はつぶれません。
あなたの仕事も別の誰かがどうにかして回します。
ただし、本当に会社をつぶせるくらい重要な仕事についているのであれば、給与交渉や待遇改善などいくらでも強気で交渉できますので、その場合は転職よりも交渉をがんばった方が良いかもしれません。
モチベーションアップの秘訣
少しベクトルが違うのですが、最後にモチベーションアップの手法について一つご紹介したいと思います。
それは仕事に目的を持つということ。
ここでいう目的とは一般的なプロジェクトの目的ではなく、個人としての目的です。
「今回のプロジェクトではこの技術を使ってみよう」「〇〇さんと仲良くなろう」など、個人的に興味があったり好きなことと結び付けておくことをおすすめします。
将来的な転職を見据えて、「実績づくり」を目的にしても良いと思います。
「仕事を通じて自分にとってメリットがあること」を意識しておくことで仕事をやる意味が生まれ、前向きに仕事に取り組めるようになります。
心を守るとても簡単な予防法ですのでおすすめです。